GOOD STORY.04

創作串揚げふらい 魂の一本

ADDRESS

NIHONBASHI TOKYO

FLOOR SPACE

57㎡

CONCEPT

日本橋・小伝馬町に隠れ家的な一軒を――。再開発が進むオフィス街の一角に明かりを灯す、落ち着ける空間作りのGOOD STORY

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CREDIT

Designer Naoko Sugitani
Project Manager Shinya Takamine

オフィス街の一角に、働く人がふと落ち着ける場所

日本橋・小伝馬町の裏通り。2018年にオープンした「創作 串揚げ ふらい 魂の一本」は、オフィス街の隠れ家と呼べる一軒です。街の雰囲気にふさわしく、和とモダンが融合する暖かく落ち着きのある空間作りのストーリーを、店主の小澤義史さんに伺いました。

優しさと力強さが融合した上質な空間

――「創作 串揚げ ふらい 魂の一本」(以下、「魂の一本」)は、小伝馬町の裏通りでは目新しいガラス張りのビル3階にあります。この立地を選ばれた理由は?

小澤義史さん(「魂の一本」店主/以下、小澤。敬省略):立地はいろいろ見た中で、まだ大規模開発されていない街に、落ちつける場所を作りたいと思いました。ここは、東京メトロ日比谷線の小伝馬町駅、都営地下鉄新宿線の馬喰横山駅から徒歩数分と立地的にもよく、裏通りにちょうどガラス張りのきれいな3階建てのビルがありました。3階しか空いていなかったのですが、屋上のテラスがセットになっていたのはポイントでした。

――この建物の3階で串揚げと聞いて、どのようなアイデアが浮かびましたか。

杉谷直子(エイケー/以下、杉谷):空中階のガラス張りという立地から、外からどう店内を魅せるかがポイントになると考えました。一本の串を連想させる「格子」、魂を連想させる「炎の赤」を、和紙と間接照明を用い、メインとなるカウンター上部の下がり壁にデザインしました。また、下がり壁につながる天井意匠には創作を加え、格子をひし形にデザインしました。

天井と下がり壁のデザイン、看板が外から見えるので、表通りからも「あのお店は何だろう」と興味を惹きつけるように工夫しました。

――小澤さんからはどのような要望を出されましたか。

小澤:雰囲気がよくて、ふと落ち着ける和モダンの空間です。小伝馬町はこれから開発が進みそうなので、賑わいのある街に隠れ家的な場所を作りたかったんです。カウンターで料理を出していくイメージもありました。

――カウンターは作り手と食べ手の接点ですが、デザインのこだわりはありますか。

小澤:カウンターが空間の中心です。舞台のようなものなので、上質感にこだわりました。

杉谷:カウンターはタモ材の突板で天然木の質感を出して、背景となる厨房の壁には重厚感のある和のボーダータイルを使いました。

小澤:カウンター席と厨房で自然に会話ができるイメージを持っていたので、遠からず近からずのほどよい距離感と、目線が上から・下からにならない高さは重要だと思っていました。

杉谷:カウンター席で会話と料理を楽しんでいただけるように、座りやすい椅子の高さやスタッフとお客様の目線の高さ関係は何度も練り直しました。

小澤:カウンター周りのお客様とスタッフの動線も難題でした。厨房の広さと席数でもせめぎ合いがあったり、よいバランスを見つけることは、すべてにおいて難しく大変なことだとわかりました。そこをうまく設計していただいて、ありがたく思っています。

ずっと一緒に歩んでいける関係性を大切に

――エイケーにデザインを依頼した理由は?

小澤:この建物には不動産屋さんが以前から付き合いのある設計事務所があったのですが、そこはちょっとイメージが違って、ホームページで店舗デザインを検索し、最初に目が留まって電話したのがエイケーでした。その後、10数社に電話をかけて2社を選び、最終的にエイケーを選んだのですが、実は一度お断りを入れたんですよね。

でも、やっぱりエイケーにお願いしたいと思った理由は、杉谷さんをはじめエイケーのみなさんからの提案にぐっとくるものがあったからです。社長の久土地さんも打ち合わせに入ってくださって、いろんな人から提案をいただけて、そういう考え方もあるんだと気づかされることがたくさんありました。

杉谷:デザインと提案で選んでいただけたのは、ほんとうに嬉しいです。ありがとうございます。

小澤:週1、2回のペースで短期間で密度の濃い打ち合わせができました。わがままばかり言わせてもらって。なにしろ初めてのことなので、エイケーと相談しながら作ることができてよかったです。

杉谷:小澤様は施工中の現場に毎日のように来てくださり、何か問題が起きたときもすぐにご相談できたり、お電話でのやり取りもスピーディーにご対応くださったのでスムーズに進めることができました。

小澤:竣工後も困りごとがあると対応していただけて、ずっと一緒に「魂の一本」を運営しているような気になっています。

杉谷:そんなふうに言っていただけてとてもありがたいです。でもそこが、デザインから設計、施工まで一括してやっている当社の強みなのかもしれません。

――ところで、屋上テラスの使い方は難しくありませんでしたか。

杉谷:そうなんです。串揚げ業態でテラスがあるのは珍しいですよね。

小澤:テラスで何か面白いことをしたいという思いはありましたが、メインはカウンターの串揚げなので、プラスアルファで何かできたらいいな、だけど何をしたらいいんだろうと、迷いながら作っていましたね。

杉谷:テラスと言うとどうしても女性のイメージが強いので、それならとことん女性目線で、仲間や友達とゆっくりしゃべれる空間にしたらどうかなと。デザインも和を残しながら洋風のカジュアルな雰囲気にしてはどうかと提案しました。

小澤:オープン後には、ランチタイムを始めたので、女性の方にもよくお越しいただくようになりました。カウンターでもテラスでもまわるメニューを、料理長が考えてくれています。タイトルで創作を謳っていることからもわかるとおり、いい意味でかなり頑固な人なんですけどね(笑)。

杉谷:その料理長の創作串揚げが、他では食べたことのないメニューばかりで、とても美味しいんですよ。

小澤:ありがとうございます。

場所づくりは、街づくりにつながっていく

――エイケーから見た「魂の一本」の強みは何だと思いますか。

杉谷:人の良さですね。ほんとうに良い方ばかりで、皆さまからここを作る熱意の強さが感じられました。実は「魂の一本」という名称を聞いたとき、内心では「これでいいんですか」と思いました。けれども、この文言に強い情熱をうまく表現されていますよね。

小澤:私も当初は「これでいいのか」と思いましたが、皆さんに「気合が感じられていい名前ですね」と言っていただき、自ら店名を名乗っていく内に結果、この名称でよかったと強く感じています

杉谷:お皿も特注でこだわっていらっしゃって、それがとても素敵なんです。この場所を大切にしたいという気持ちが強く感じられました。

――エイケーといえば、迫力のある看板が得意なイメージがありますが、今回の看板の形態になったのはどういったところからなのでしょうか。

小澤:この建物自体が外看板を禁止しているという事情もありますが、私達としても街の景観を壊さない、むしろ価値になる存在を目指しています。そういう背景もあって、エイケーが提案してくれたガラス越しのネオンサインが、外から見える唯一の表示です。大通りからとても見やすいのでこの提案はありがたかったですね。

――「魂の一本」を訪れる方々の反応はいかがですか。

小澤:入ってきた瞬間の反応もいいですよ。特に、夜の雰囲気がいいです。カウンターの天井部分の照明の光が暖かい色なので、とても落ち着きます。木の質感も安らぎますし、店の外にこぼれる光も暖かいですね。

杉谷:オフィス街の中でこのビルは1階から4階のテラスまで明るくて、静かで落ち着いた環境にありながら賑わいも感じられます。地域で働く方々にとって、心がウキウキする場所になっているのではないかと思います。

小澤:それは嬉しいです。私達も地域の活性化に微力ながら貢献したいと思っているんですよ。小伝馬町エリアの価値を高めるような存在になれたらいいですね。

[店舗紹介]
創作 串揚げ ふらい 魂の一本
2018年、日本橋・小伝馬町のオフィス街にオープン。3階はカウンターとテーブル席、4階は4〜6名の個室とオープンテラスがあり、さまざまな用途に対応。創作串揚げを専門に、魂を込めたおもてなし、魂を込めた一本を追求している。

[プロフィール]
小澤義史
創作 串揚げ ふらい 魂の一本 店主
京都出身。飲食サービスは「魂の一本」が初めて。串揚げの創作料理と落ち着ける空間で、働く人を温かくもてなす憩いの場を作ろうと尽力している。

杉谷直子
2017年9月、エイケー入社。新規案件の打ち合わせから、提案、設計、施工管理、アフターフォローまでトータルにお客様をサポート。 お客様とのやり取りを迅速に行うよう心掛け、お客様が何でも相談できる担当者を目指している。