GOOD STORY.01

稲庭うどんとめし 金子半之助 COREDO室町2店

ADDRESS

NIHOMBASHI TOKYO

FLOOR SPACE

92.56㎡

CONCEPT

桜を花見しながら食事を楽しめる空間構成 日本橋 金子半之助の新ブランドである「日本橋 稲庭うどんとめし 金子半之助」は、日本三大うどんの一つである「稲庭うどん」と得意分野である「めし」を掛け合わせ、お客様にどのように楽しんで頂けるかをとことん追求したてん店舗になっています。 誰よりも下町を愛し、誰よりも和食を愛した金子半之助の心を今に伝えるため、日本人なら誰しもが愛する「桜」をモチーフに空間をデザインすることにしました。 店舗は、COREDO 室町 Ⅱ という好立地の中ではありあすが、B1階の奥まった場所にあり、店内に至るまでのアプローチがとても大切になると考えました。 お店に至るまでの高揚感、期待感を生み出すために、ファサード側の壁面は、桜の木彫りアートを配置し、長いアプローチを待機的に印象付けるものとしました。 店内に入ると、柔らかく美しい木目調をベースに、ビッグテーブル中心に存在感のある桜(春の季節限定)を配置し、どこの席に座っても花見ができる空間となっています。 また中心の生木は、季節によって変わり、日本の四季を感じることができます。 年配のお客様から若い世代まで、幅広い層のお客様が、懐かしさと華やかさを感じるデザイン空間は、愛情を込めて大切にすることで、お客様からずっと愛される店舗になってほしいという願いが込められています。

MORE

CREDIT

Designer  Satoko Seki
Project Manager Shinji Kudochi

「粋で豪快」を不変のテーマに、お客様と向き合う店作り

並んでも食べたい本場の江戸前天丼の店「日本橋 天丼 金子半之助。その廃れることのない人気の秘密は、お客様と向き合う姿勢にありました。経営者の金子真也さんに、エイケーとの店作りを、コレド室町2に開店して3年目を迎えた「稲庭うどんとめし 金子半之助」で話を伺いました。

こだわりの「玉手箱」で
うれしいサプライズ

金子真也さん(金子半之助 経営者/以下、金子。敬称略):「粋で豪快」を変わらぬテーマに掲げています。もともとは、価格を粋(リーズナブル)に、食べる商品を豪快にと考えてきました。「粋で豪快」であることを変えないために、いろいろなことを変え続けています。私自身のことをいえば、お客様、スタッフ、取引先と「向き合うこと」は守り続けています。20代で商売を始めたときは、どうすれば儲かるのかとものごとを「頭」で考えていましたが、どうしたらお客様に喜んでいただけるのかと「心」で考えるようになったことが、いちばん変わったのかな。

―お客様やスタッフ、周囲の方々と向き合うことで変わってきたのですね。「金子半之助」という店舗はどういう場所でありたいとお考えですか。

金子:やはり「向き合う場所」です。経営を始めたときと思いは変わりません。世の中で「この店わかっているね」「この店さすがだね」と思われる店は、お客様やスタッフと向き合っていると思います。

―「稲庭うどんとめし 金子半之助」にも、その思いは表われていますね。

金子:はい。私の父と母が小さい料理店で稲庭うどんを出していました。父が他界して母一人でカウンター7席の稲庭うどん屋を切り盛りしていたんですよ。いよいよ母が引退するとき、この稲庭うどんをなくしていいのかとシンプルに思いましたね。そこで、稲庭うどんを継承するにあたって私達が作ってきた天丼、海鮮丼と一緒に食べられる店が日本橋にあったらいいなと思ってコレド室町に出店しました。

―商品へのこだわりはありますか。

金子:稲庭うどんと天丼が食べられるだけでなく、お客様に喜ばれるものは何かないかと考えたのがトッピングです。薬味の容器をただ並べているだけでは面白くありません。「玉手箱」が目の前にあって、パッと開けたら何種類ものトッピングが入っていて、ぜんぶ無料で食べられたらお客様は喜んでくれるだろうと思って、エイケーに「玉手箱を作ってよ」と相談したら「玉手箱ですか?」と。

久土地智志(エイケー社長/以下、久土地):金子さんに「玉手箱」の話をお伺いしてすごく面白いなと思って、蓋の付いた箱をテーブルに埋め込みました。私もこの店によく食べに来ますが、隣席のお客様がお連れの方に「これ開けてみて」と自慢げに話をしているところを見ると嬉しいですね。

金子:プレゼントでも初めから中身が見えているときと、リボンがかけられた包みを開けたときの感動は違いますよね。開けたときにトッピングが1種類ではなく、何種類もあってぜんぶ食べていいとなったら期待感を超える感動がありますよね。玉手箱を閉めるときもバンバン音が鳴ると雰囲気が壊れるので、ゆっくりと静かに閉まってほしいとリクエストしたことが実現されています。さすがエイケーですね。

満開の桜と一流の手仕事で「粋で豪快」を演出

―「稲庭うどんとめし 金子半之助」の店舗デザインで実現したかったことはありますか。

金子:今までの延長線でもありますが、単価1000円のうどん屋というだけでは、来ていただくお客様にとって何の魅力もありません。素敵な店でおいしく食事ができて、なおかつリーズナブルであるところが、私達、江戸っ子の言うところの「粋」なんですよ。今どきは「粋だね」という言葉を使う人は少ないかもしれませんが、空間として「粋」を感じてもらえることを大事にしています。

久土地:「粋で豪快」を、四季で変わる花で表現したいと思いました。

金子:私は彼から感性を学びたいと思っているんですよ。海外視察でご一緒させていただいた店にニューヨークの「パークアヴェニュー」というアメリカンフードの流行店があるのですが、そこで感動したのは四季があることです。季節ごとにスプリング、サマーと店名が変わり、内装の演出もぜんぶ変わるんですよ。久土地さんから「ここは粋に花はどうですか。春は桜、夏は新緑……」と提案があり、「やるなあ」と思いました。

―エイケーとしてデザインで工夫したことはありますか。

久土地:店舗がコレド室町のB1フロア奥の角にあるので、中央のエスカレーターを降りたときに遠くからでもいちばん目立つように、外壁をオープンにして店内の桜のレリーフが見えるようにしました。桜のレリーフは木を手彫りで造作しました。

金子:そこなんです。エイケーがやってくれていることを言葉で表すと、単価1000円だからと1000円なりの店は作らない。高級感があって居心地がいいことをすごく大事にしてくれています。私がぬくもり感のある店が好きだということもわかってくれているんじゃないかな。

久土地:タイルや壁の色、テーブルの素材や椅子の座り心地などは考えました。

金子:ぬくもりがあるだけなら、どこの工務店・デザイナーでもできますが、ぬくもりがあっておしゃれであることが、エイケーの得意とするところだと思います。私の父の教えでもあるのですが、江戸っ子というのはシティーボーイで最先端でなきゃいけないんですよ。「粋で豪快にいきねぇ」てのは最先端を走ることなんだと。実は他の会社に本店のデザインを引いてもらったら、ただの天丼屋でしかなく、日本橋の天丼屋が古臭いのは粋じゃないだろうと思っていたときに、エイケーと出会いました。

―エイケーのどこに他の会社との違いを感じますか。

金子:遊び心がないとこういう感性は出せないと思います。来店されたお客様が誰かを連れてまた来たくなる空間は、おしゃれでちょっとした新しさを感じられないといけないと思うんです。そこで難しいのは、流行を追っていくと同時にどんどん廃れていくものですが、エイケーのデザインは、ここは3年前に作った店舗ですが、まったく古く感じさせないんですよ。

久土地:いろいろな店舗を見てきたので、これは廃れるなというのは経験でわかります。5年先、10年先も流行る店がどういうものかを考えながら、ものごとを見るようにしています。

金子:デザインが尖りすぎていないんですよ。ちょっと先を行くところがさりげなくおしゃれ。使う素材も本物だから、廃れずに後々の重みに変わっていっていくんですね。台北の一号店も「桜を描かせたら日本一」と評される絵師をわざわざ日本から連れて行くほど、こだわっていますよね。

久土地:この店の桜も同じ絵師の作品です。いいものを作りたいので、一流の職人やアーティストと仕事ができるように、自分もその域に持っていけるような生き方をしたいと思っています。

海外でも認められる日本の飲食業を目指す

―「稲庭うどんとめし 金子半之助」でお客様とのGOOD STORYはありましたか。

金子:父母から継いだ稲庭うどんは、私が子どもの頃から食べていたものなので、お子さんも含めて誰にでもお店に来て食べてほしいという思いがありました。だから、スタッフとの会話の中で「子どもさんがすごく喜んでくれた」という話を聞くとうれしいです。子どものときに食べたおいしいものは大人になっても記憶に残りますから。

久土地:私は玉手箱を開けるお客様の驚きですね。「何これ!」という歓声が店じゅうに広がっていくところをよく見ます。

―金子さんから見た、エイケーの強みはどこですか。

金子:会社と会社、店舗とデザインという関係で言えば「親友」です。つまり信頼できるということ。この店もそうですが、お願いしてから完成するまで一度も工事を見ません。

久土地:金子さんは、いつもそうですね。

金子:プロとしてやるからには、結果がすべて。自分はどういう店を作りたいかを語り、あとは任せます。その代わりしっかりしたものを作ってくださいというのが私のやり方。予算に関してもあまり話したことはなく、だいたいこのぐらいで作ってくれるだろうというところに落ち着いています。

―久土地さんが、金子さんに共感することは何ですか。

久土地:金子さんと出会ったのは7、8年前。当社の設計が2、3人のときからお付き合いをさせてもらっています。お客様が喜ぶことを会社として考えていこうという金子さんの思いをスタッフに話したら、みんな同じ思いを持っていました。「心」で仕事をすることを教えてくれた金子さんは、自分の成長の手助けをしてくれている存在です。

金子:エイケーには最後まで一緒に作り上げようという熱心さがありますね。当たり前かもしれませんが、経営者の感覚としてはそれ以上のものがあって、自分達のお金を投資して完璧なものを作りたいという思いに久土地さんだけでなくデザイナーのみなさんも、妥協せずに付き合ってくれることに熱を感じます。

―お互いに熱を感じますね。今後の展望をお聞かせいただけますか。

金子:日本にとどまらず海を越えていくことです。現在は台湾、アメリカで店舗展開していますが、もっといろんな国に出ていくためには、味だけでは勝負できません。そこにはデザインが必要です。日本のものをそのまま伝えるのではなく、「日本人として我々はここまでできる」ことを示していきたいです。

久土地:日本人としてがんばります。

金子:海外で成功した名だたる日本企業には、自分達の商品をみんなに認めてほしいという熱い思いがあったのだと思います。私は「食」でそこを目指したい。だから、私達の飲食チームだけでは叶わないところを、デザインのチームと組んでやることはとても大事だと思っています。

以下、プロフィール

[店舗紹介]
日本橋 天丼 金子半之助
東京・日本橋の三越前に本店を構える天丼の名店。和食会の重鎮であった金子半之助の閻魔帳(レシピ帳)に書かれた「秘伝の江戸前の丼たれ」の作り方をもとに孫の金子真也氏が完成させた1杯の天丼で行列の絶えない繁盛店に。現在、天丼、天ぷらめし、仕出し弁当の業態で、国内11店舗、海外(アメリカ、台湾、マカオ)10店舗を展開している。

[プロフィール]
金子真也(写真:左)
日本橋 天丼 金子半之助 創業者
1978年、東京・文京区生まれ。料理人の家系に生まれ、祖父・金子半之助に預かった閻魔帳をもとに完成させた粋で豪快な江戸前天丼で、20代で「日本橋 天丼 金子半之助」を三越前に開業。国内はもとより海外出店も精力的に進めている。

久土地智志(写真:右)
株式会社エイケー 代表取締役社長
1981年、神奈川県横浜市出身。家業の工務店に就職して現場監督として勤務したのち、2013年に会社を継ぐと事業を店舗デザイン・施工に転換。職人時代に培った現場を見る目と持ち前の感性で次々に繁盛店を作り出している。