GOOD STORY.02

つじ田 勝どき店

ADDRESS

KACHIDOKI TOKYO

FLOOR SPACE

92.56㎡

CONCEPT

主張と調和で紡がれた空間 つじ田の「味から絆へ」というブランドコンセプトから、従来のラーメン店の入りづらさを一新し、守るべき一線と、これまでとは違う魅せ方=進化とのバランスで、より多くのお客様にご来店いただけるお店を作りたいと思いました。 ラーメン店というと、サラリーマンのお客様や男子学生が多いイメージがありますが、平日のサラリーマンのお客様が土曜日に家族の方と私服でいらっしゃった時や、彼女を連れてきてくれた時に、一つの味から「絆」が生まれるように、つじ田ブランドを守ることと、食する空間が進化することを意識しました。 内観は、空間を構成する大きなデザインの骨格として、アーチ型の天井を設けました。大きな屋根の下で、お客様と従業員が一体となって包み込まれるような距離感を作り出すことで、つじ田が大切にしている「お客様との絆」を生み出すことを意識しています。全体的に木目の温もりを感じる、落ち着いた雰囲気の空間としています。 ファサードは、店名を大きく主張した看板が印象的ですが、冊子を全てガラス張りにし、店内のデザインを魅せすることで、従業員の振る舞いやお客様の雰囲気までも伝わり、一体感のあるデザインとしています。 主張する部分と調和する部分とのバランスを意識することで、男性客だけでなく、ファミリー層や、女性1人のお客様でも入りやすくなり、つじ田のつけ・店舗がより多くの人から愛されることを願ってデザインしました。

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CREDIT

Designer  Satoko Seki Saeko Ojima Ayaka Hasegawa
Project Manager  Yasuhito Koike

現場で会話を重ねて繁盛店をデザインしていく

店主が研究を重ねた濃厚豚骨魚介つけ麺が絶大な人気を誇るラーメン店「めん徳二代目つじ田」。幅広い層に支持される理由はおいしさだけではありません。2018年1月に新規オープンした勝どき店で、経営者の辻田雄大さんに店作りの思いをお伺いしました。

作り手の人柄が、商品に表われる

―「めん徳二代目つじ田」といえば濃厚豚骨魚介つけ麺が支持されていますが、商品のこだわりを教えていただけますか。

辻田雄大さん(めん徳 二代目 つじ田 経営者/以下、辻田。敬省略):私が思っている商品というのは、ラーメンそのものだけではなく、店の空気なんです。味、接客、店の雰囲気(内装デザイン)、この3つがぜんぶ重なって店の空気が生まれます。その空気をいちばん大事に商品作りをしています。

久土地智志(エイケー社長/以下、久土地):辻田さんの店は、カウンターで麺を待っている間からシズル感(※)がありますね。

辻田:それも空気。エイケーさんにお願いしているのは、ライブ感があってお客様が待っているときから楽しめる空間作り。それを理解し合って一緒に仕事ができる、会社と会社の空気感も大事です。

―辻田さんとエイケーの出会いのきっかけは?

辻田:そもそもはホームページです。以前、一緒に仕事をしていた工事会社が不況のあおりで廃業してしまったので、インターネットで「内装」「設計」「施工」のキーワードで検索したら最初に出てきたのがエイケーでした。とりあえず会ってみたら、社長の久土地さんが同世代で感じもよかったので一緒にやってみようと。4軒めの店舗で施工・デザインをお願いして以来、一度も他社に変えたことはありません。

―エイケーにデザインを依頼する決め手は何でしたか。

辻田:決め手はフィーリングです。久土地さんの人間性。これから何軒も出店していくのに、自分達と気の合う人間性の良い方とお付き合いしたいですよね。久土地さんは人柄があったかい感じがしました。ラーメンもそうなんですよ。店主の人柄がラーメンにも出るように、店作りにも施工会社の社長やデザイナーの人間性が出ると思います。それがひいては、店の空気に繋がり、お客様に伝わって繁盛店ができていくのかなという気がします。

久土地:辻田さんと初めてお会いしたのは、7、8年前。デザインと設計を入れて今のエイケーになる前の、私がニッカポッカを着て現場監督をしているときからのお付き合いで、いろいろと勉強させていただきました。「お前はこっち」と道を示してくれたのも辻田さんです。

辻田:だって、ひどいんですよ(笑)。無理を言って通常よりも短い工期で頼んだ工事を一生懸命にやってくれるのはいいんですが、夜中まで明かりが点いているので覗いてみると久土地さんが一人でニッカポッカを着てペンキを塗ってくれていたので申し訳ないと思って、次の日にそれを見に行くと塗り方が汚い感じで……。「社長は工事をやらないほうがいい。久土地さんが輝けるのはそこではない」と言いました。実際、久土地くんはものを見てよく勉強しているんですよ。北は北海道から南は沖縄まで、海外でもいろいろな店の内装を見ているから、その感性を生かしたほうがいい、とアドバイスしました。

久土地:内装を雑誌などで見るのと現場に行って肌で空気を感じるのとでは、まったく違いますね。ストーリー、シズル感、商品の見え方など、店舗を作るときの視点も辻田さんから教えていただきました。

(※)シズル感=英語の擬音語で肉を焼く時のジュージューいう音、シズル(sizzle)から転じて、食欲や購買意欲を刺激する“おいしそうな感じ”をいう。

お客様とスタッフの実直なストーリーを描く

お客様が店舗に思い描く“物語”をデザインし、消費者との価値ある“繋がり”を作ること。エイケーで働く人たちが思い描く“物語”をデザインし、それぞれの挑戦を支えること。新しく掲げたコーポレートメッセージ“GOOD STORY WITH YOU.”には、そんな“2つの想い”を込めています。私たちは設計施工の会社として、1999年に創業しました。現在も自社内に職人を抱え、“現場”というアイデンティティを大切にしながら、デザイン領域まで事業を拡張してきました。私たちが目指す“世界一のデザイン・設計施工会社”という志の実現のために、今後もさまざまなフィールドへ挑戦しながら、さらなる成長を目指していきます。

―エイケーからはどんな提案がありましたか。

辻田:提案してもらうというよりも、一緒に「これはどうだろう」「あれはどうかな」と話し合いながら作り上げています。エイケーはこれだけ繁盛店を作っているのに、押し付けがましいところがなく、私達に寄り添いながら上手にプロデュースしてくれます。そこにも久土地さんのあたたかい人間性が出ていますね。

―勝どき店ができるまでの話をお聞かせください。

辻田:いつもそうですが、物件を見つけたら久土地さんに夜中でもいいから時間を作って一緒に現場に来て見てもらい、良い店が作れそうかを判断してもらいます。設計と施工を両方されている強みで、電気の容量、水道管の太さ、ガスが通っているかも見て、どこに資金がかかるかもアドバイスしてくれるので助かります。物件の契約後に話をしていく中では、勝どき店は交通量の多いところなので看板を大事にしましょうと。「つじ田」というブランドの迫力や勢いを表すのに、看板はすごく重要です。通常の店舗より大きく作ってもらいました。

久土地:店の前や道路の反対側にも立って見て、辻田さんと会話をしながら、ここへ来るお客様も想像しながらデザインを組み立てていきました。

辻田:店舗の立地としてオフィスもありますが住宅もあります。とくに土日は家族連れが多い場所なので、席の背後の通路幅はベビーカーを置いても人が通れるように広く取ったのも久土地さんの提案です。私達からすると通路幅よりも厨房を広げたいと思ってしまうんですけど、うまく考えてくれています。

―打ち合わせは、かなり頻繁にされたのですか。

辻田:思いついたら久土地さんに電話をします。工事を進めながらでもいろいろ対応してもらえるのはありがたいです。私は素人なので図面で見たときはいいと思っても、後から「ここをもう少しこうしたい」ということが出てくるので、現場で会って話をします。最近は、エイケーも会社が大きくなり、久土地さんのスタッフもよく勉強されてみなさん優秀なので、彼らとコミュニケーションを取りながら上手に進めてもらっています。

―エイケーのこだわりもありますか。

久土地:先ほどのストーリーで言えば、お客様につけ麺が出されたときの見え方だったり、厨房の風景を気にしました。それから、照明にはこだわっています。

辻田:最近では海外の店舗もエイケーにお願いしています。昨年オープンしたロサンゼルスの坦々麺の店もエイケーに設計してもらいましたが、やはり照明がすごくきれいに出ていますね。

―「二代目めん徳つじ田 勝どき店」の評判はいかがですか。

辻田:おかげさまで行列していただいています。開店して3カ月が経ちましたが、売上げが再び上がり始めています。看板を上手に作ってくれたことが、お客様が入りたくなる店作りにとても貢献していますね。インスタグラムを見るとよくわかりますが、久土地さんがこだわってくれたところをお客様が撮って載せてくれています。デザイナーの狙いが上手にはまった証拠です。

お客様に喜ばれる“空気”をこれからも

―これからの店作りで変わることもあれば、踏襲する部分もあると思います。絶対に変えたくないこだわりはありますか。

辻田:一号店を開業したときから、今も、この先もそうだと思いますが、こだわりは店の空気です。私が感じる空気なので言葉で説明するのは難しいのですが、そのときの気持ちや良い物件との巡り合わせで、お客様に喜んでいただける空気をエイケーと一緒に作り上げていきたいです。

―久土地さんにとって辻田さんはどんな存在ですか。

久土地:辻田さんに店作りを教わって今に至っているので、私にとっては「師匠」みたいな存在です。自分が町の職人の時代から知り合って、師匠にぜんぶ教えてもらいました。

辻田:そうは言ってくれるんですが、すごく勉強しているんですよ。一緒に店を見に行ったり、飲みに行ったり、遊びに行ったりしている間に、久土地さんは私がやりたい空気を言葉ではなく肌で感じてくれていると思うんですよ。そこを上手に表現してもらえているんじゃないかな。だから、空気を大事に店作りをしていきたいです。

久土地:今年の春は、辻田さんと一緒にミラノサローネ国際家具見本市に行って、いろいろな建築やデザイン、家具を見て、イタリアの繁盛店を訪れて空気を感じてきます。

辻田:実際に行って感じてみる。そこが、久土地さんの勉強熱心なところですよ。

――辻田さんと一緒に仕事をして、どんなところに気持ちの良さを感じますか。

久土地:繁盛していると聞くのがいちばん気持ちいいですね。

辻田:おいしいものを出すお店は、私達からすれば、たくさんあります。しかし、おいしい店がどこも流行っているかといえばそうではありません。それって結局は、店の空気が作れていないから繁盛していないんですよね。

久土地:そうだと思います。

――最後に、辻田さんから見たエイケーの強みをお聞かせください。

辻田:ひとえに社長の人間性です。人間性がデザインや社風に出ています。中小企業は社長の人柄がすべて。エイケーの強みは社長である久土地さんの人柄以外の何ものでもありません。

久土地:ありがとうございます。師匠にそう言っていただくと照れますね。

以下、プロフィール

[店舗紹介]
2003年、東京・御茶ノ水に1号店を開業。店主の辻田雄大氏が研究を重ねた濃厚豚骨魚介スープのつけ麺をすだちと黒七味で変化を味わうスタイルが支持され行列店に。現在、「つじ田 味噌の章」「成都正宗担々麺」などの姉妹店と合わせて国内11店舗、昨年ロサンゼルスにオープンした「KILLER NOODLE」をはじめ海外6店舗を展開。

[プロフィール]
辻田雄大(写真:右)
つじ田 創業者
1978年、東京都生まれ。高校卒業後、居酒屋に就職し、22歳で自分の店を出すがその居酒屋を売り、23歳頃からラーメン修行を始める。26歳でラーメン店「つじ田」をオープン。2011年にはアメリカ・ロサンゼルスに進出し経営者としての手腕も発揮している。

久土地智志(写真:左)
株式会社エイケー 代表取締役社長
1981年、神奈川県横浜市出身。家業の工務店に就職して現場監督として勤務したのち、2013年に会社を継ぐと事業を店舗デザイン・施工に転換。職人時代に培った現場を見る目と持ち前の感性で次々に繁盛店を作り出している。